>エンディング 【微笑む暴神<スマイリィ・アレス>】

「皆、無事か!?」
「トコちゃーん!!」
駆け寄ってきた基子に、苺花が歓声を上げる。後ろから真琴も近づいてくる。こちらも普段と変わらぬ無表情だが、ど
ことなく嬉しそうに見える。
「あー…くそ、ばてたっ」
変身を解き、放り出していたブレザーを羽織ると京也はその場に座り込む。下の服はかろうじて纏っているがずたぼろ
だ。
「キョーちゃんお疲れ〜。結構暴れちゃったね、大丈夫かな?」
「支部の方には連絡してある。すぐに隠蔽に動けるだろう。藤倉、傷を見せろ」
「おう」
一番傷の深い京也に基子が<癒しの水>を使おうとしたその時、
「高里支部長」
「ッ!? …卜部、いつの間に」
その後ろに、痩せぎすの学生服を着た青年がぬぼり、と立っていた。
「他の支部にも応援を頼んだのに、何でお前が真っ先に来るんだ…」
苦虫を噛み潰したような顔で基子がぼやく。彼の名は卜部雅臣、基子の幼馴染にして、UGNチルドレンからエージェ
ントになった生粋のUGNの人間である。実力はかなりのもので、評価されているのだが、基子にはひたすら疎んじら
れている。何故かと言うと、
「で、隠蔽部隊を連れてきたのか?」
「いえ。応援に」
「応援?」
「も…いえ、高里支部長のお役に立てればと思い」
名前を呼ぼうとして、基子に睨まれて留まるのも彼らのいつもの光景である。つまり彼は、このラストバトルが丁度終
わった状態で純粋に加勢に来たらしく、たった一人。どうにも、とことんタイミングが悪いのだ。勿論今回も、彼に関
しては普段が嘘のように堪忍袋の緒が切れやすくなってしまう基子が、
「 遅 い !!!」
どがごすっ。
と、怒りの鉄拳を腹に見舞って、地面に沈めさせることになった。
「あはははは! あ、キョーちゃん髪落ちてるよ〜。はいヘアバンド」
「おう、悪…ぃ?」
その光景を笑いながら見ていた史明が、ふと思いついたというように隣にべったり座っていた京也の頭にぽふりと何か
を被せる。普段つけているものと全く違うそれの感触に京也が気付いた時には既に遅く、
「三崎ー! 写真撮って写真!」
「仰せのままに!!」
パシャッパシャパシャッ。
「なっ…ちょっと待てどっから出した、そしてどっから出てきたそこの秘書ォー!!!」
慌てて頭から取り外すそれは、可愛らしくレースをあしらわれた、正しくメイドのヘッドドレス。これをやりたいが為
に、史明はずっと持ち歩いていたらしい。怒りの赴くままに、勿論京也はそれを地面に叩きつけたが。
「あー勿体無いー。似合ってたのに!」
「嬉 し く ね え よ !!」
「史明さん、ご心配なく。こちらのカメラはポラロイドです!」
「つか本当いつ来たんだよ秘書!」
「さっすが三崎、解ってるぅ! イチカちゃーん、これ見て見て見てー!!!」
「えーなになにー? 見せてー!」
「止めろ馬鹿タレえええええ!!!」
怪我をものともせず追いかけてくる京也に対し、きゃーっと蜘蛛の子を散らすように苺花達が逃げていく。
「…平和、だな」
そのいつもと同じ光景を見ながら、基子は改めてそっと安堵の息を吐く。…その足は未だ、卜部の背中をぎっちりぐり
ぐりと踏みつけていたが。
そんな基子と卜部をじっと見ていたのは真琴。つつつ、と近づき、基子には聞こえず卜部にだけ聞こえる声で、ぼそり
と呟く。
「はっ。……トベの分際で、生意気な」
「……私は…卜部…」
ぽそりと呟かれた卜部の突っ込み返しは、やはり誰にも拾われずに終わった。彼女の名誉の為に言っておくが、真琴は
別に卜部が嫌いなわけではない。ただ、いじりがいがあって美味しいとは思っているらしい。
「うわー似合う似合う! 藤倉ー、これつけたまま文化祭でおぎや○ぎやってよ!」
「死んでもやるかー!!!」
「だったらオレもつけるよー! いっそ全身総メイドでやるよー!」
「テメェ一人でやってろ!!」
「メイド…いけません史明さん、そんな破廉恥な…危険です!」
「お前が一番危険だよそこの秘書!!」
構わず騒ぎ続ける者達の声が、夕焼けが始まった空に吸い込まれていった。





END。