Master ひとりぼっち






猫は走る。
街中を走る。
道を走る。
頭の中は逃げることしか考えていない。
この世界でやっと見つけた、一番大切な存在に、拒絶されるのが怖かった。
異質なモノは排除される。それは、存在する上で当たり前の事だったから。
今までなら、何に拒絶されようと、或いは何を拒絶しようと、平気だった。
自分はそういう存在だったし、自分以外の存在に興味も無かった。


でも、あの子は。


あの子、だけは。




「はいはい、にゃんこちゃん回収〜!」
「!!!」



油断していた。思考しているうちに何処を走ったのか、広場のようなところにたどり着いていた。
そしてそこで、自分を売ろうとしていた商人に捕まり、抱き上げられたのだ。




「ファーッ! ファーッ!!」




必死に威嚇するが、男は手馴れたもので爪を避け、押さえ込まれる。
男の後ろで、苛立つもう一人の男の声が聞こえる。




「急げ![category:Judge]がこの星にいるんだぞ!?」
「はいはい、わかってますってぇ〜! ……あら?」




自分をどうにか抱えあげた男は、自分の変化に気づいたらしい。しまったなぁ、という顔をした。




「…この子もしかして、もうご主人様ついてるん? あちゃあーどうしますぅ? もう解除不可能でっせ」
「別に構わん。ワシはその力が欲しいわけではない、ラプラスの魔を飼育するという事実、それだけが重要なのだ」
「まぁ、お客さんがそう仰るんでしたら、あたしぁ何も言いませんがぁ。…堪忍なぁ?」




詫びの言葉には、感情が篭っていた。勿論、何の慰めにもならなかったが。
嫌だ、嫌だ、嫌だ。
やっと見つけたのに、やっと会えたのに。
やっぱり嫌だ。
嫌われても、拒絶されても。
自分は、あの子の傍にいたいんだ。




⇒Climax