Master01 開かれた傷口






「アズラフィル。―――帰るぞ」




そう言って、銀色の鬼は手を伸ばした。
斎は動けない。ここまで自分の足で歩いてきたけれど、動かない。


もう、あの暗闇に戻るのだけは嫌だった。


言うことを聞かない斎をどう思ったのか、サミュエルは少しだけ目を眇める。
その瞬間。




斎の足元が無くなった。





空間がまるで傷口のようにぐぱり、と開き、斎とサミュエルを飲み込んだ。
それはすぐに閉じてしまい、無音再び。








季節外れの雪が積もっていた道の斎の足跡も、すべて消えてしまった。






⇒Opening01