Master 人形遊戯
「キャハハハハッ! パパァ、パパァ!」
無邪気な声が暗い回廊に響く。場違いなほど楽しそうな笑い声を上げて、紅いドレスの少女が駆けて行く。
彼女が向かう先の部屋のソファに、一人の男が座っている。分厚い本を読みながら、ソファでくつろいでいる。
少女はまるで猫のように、その肩に懐く。
「ねぇパパ、あたしパパの言ったとおりあのオハカを壊してきたよ! 褒めて褒めて!」
男は視線を動かすことも無く、本を見ながら声を返した。冷たい…というよりも、何の感情も篭っていない声で。
「確かに破壊したようだが、術は発動していない。失敗だ」
「えっ…そ、そんなことないもん! あたし、パパの言ったとおりにしたもん! きっとあいつらが邪魔したんだっ!」
「アズラフィルか」
ほんの僅か、ほんの僅かだけ、男の声に感情が篭った気がした。
少女は不快になった。父に怒られることよりも、父の興味が別に行くことの方が嫌だった。
「待ってて、パパ! 今度はちゃんとするから! だから、ちゃんと上手くいったら、…あたしのこと褒めて?」
「あぁ」
やはり感情の篭らない声。それでも少女はとても、嬉しそうに笑った。
「キャハハハハッ! あたしがんばる! がんばる! パパの言うとおりにする! 邪魔する奴は、皆殺す!」
少女の足音が遠ざかり、男はひとつ呟いた。
「さて。お前は如何する、アズラフィル。もしも邪魔をするのなら―――」
そこで声は途切れた。別の影が、別の来客を告げたからである。
「サミュエル様。リリム様、クユ・メリア様、両名おつきになられました――」
⇒Middle11